再び三角な関係 💞L恋小説 春の晩夏14💞

L恋小説

💞L恋小説💞 春の晩夏14 再び三角な関係

 部活終了が夕方の6時。それから片付けと着替えがあってバレー部の新田さんが待ち合わせの自転車置き場にきたのが6時半。着替えもなく片付けなんてたかが知れている美術部なわたしは待ちぼうけをくらう。分かっていた事ではあるけど、やっぱり断わればよかった……。
 しまむらは7時に閉まっちゃうそうだから大急ぎ。一日に一桁しかバスが通らないのに『バス通り』とか名づけられた片側一車線の狭い道を、わたしを荷台に乗せた新田さんの自転車が突き進む。
 いくつか質問して、ある程度のメドをつける。この人は顔立ちも整っているし、スタイルもいいから組み合わせさえ間違えなければ何系でもいけるだろう。わたしのカノジョに気に入られたい為のお洒落の手助けをする微妙な感じのわたしです。
 
 閉店16分前、わたしたちはお客さんがいない店内に駆け込んだ。きっちり7時にシャッターを閉める気満々だったと思われる店員さんのため息が聞こえそう。そんなプレッシャーを感じつつ、オリーブグリーンのカーゴパンツと、ユニセックスなオーバーサイズの白い半袖Yシャツに、底がスニーカーっぽい素材のサンダルをコーディネートした。試着室の鏡を見て本人もご満悦。閉店1分前に会計を済ませた。

 そういえば今更だけど、先生は今週で実習期間が終わるからオシャレ服を買っても見せるチャンスなんてないんじゃない? どうするつもりだろー。いや、わたしが心配するのも変だし、言われてもいないのに先生のことを持ち出すのもちょっと違う。この人とどんな距離感でいたらいいのか悩む。

 大きな通りに出て二人乗りはせずに並んで歩いた。初めての道を少し歩くと土手の手前の敷地に錆びたコンテナが5つくらいあって、辛うじて読み取れる色の濃さで『カラオケ』って書かれた看板があった。もしかしてコンテナがカラオケの個室? この町は中心地からちょっと外れただけで知らない景色が見える。
 すると新田さんがその敷地に入っていって自転車を停めて「寄っていってよ」って手招きした。
 え? 奥を見ると普通の民家がある。ここに住んでるってこと? その人はコンテナの扉を開けてもう一度手招きした。
 「前、親がカラオケボックスやってたんだけど、今は営業してないから」
 「あ、わたし今日は帰る。それで、分かるところまで一緒に行って欲しいかな」
 「後で送ってく。いいからちょっと寄って」
 押されて買い物には付き合ったけど、これ以上一緒にいても……。しかしながら、そこは哀しき方向音痴。拒否権を発動する勇気はなかった。

 コンテナの中は意外と広くて普通の部屋だった。ベッドがあって机があってタンスがある。部屋の真ん中にはカラオケボックスで使っていたと思われるガラステーブルとソファーが存在感を放ちどんと置いてある。あとは賞状とか集合写真とかバレーボール関連のものがいっぱい飾ってあった。
 新田さんはいきなり制服を脱ぎだした。飾りのない白いブラと、薄いピンクのショーツという上下そろっていない下着姿になってクーラーの送風口に向かって手を広げた。
 「あー、熱かったぁ~」
 胸はBカップくらい? 肌は白い方でしっかりとした身体つきをしている。ジャンプするからか、ふくらはぎがぷっくりとして足首がきゅっと絞まっていて小さなお尻は大きさも形も理想的ですきがない。思わず手を伸ばして触れてみたくなる。
 「春ちゃん、熱くない? なんなら脱ぐ?」
 「遠慮しときます」
 ドギマギして敬語になった。そう言えば、さらっと下の名前ちゃん付けされてる。
 新田さんは下着姿のまま、ミニ冷蔵庫からスポーツドリンクを注いだコップを持ってきた。目の前に置く時、ブラのカップが浮いて、勃っていない薄い桃色の乳首が見えた。
 「ごめんね、家まで付き合ってもらって。それで一コ聞きたいんだけど」
 なんだろう。この人の質問は予測不能。それよりも「あのさ、取り合えずなんか着ない?」見たくないわけじゃなく、目のやり場に困っている。
 「だよね。部活してるとこんなの気にしてられないからさ」ソファーの上に放り投げられていたタンクトップとジャージの半パンを身に付けた。そして改まった感じで切り出した。
 「あのさ、瑞希ちゃん。実習生の。美術部だし、春ちゃんのクラスの担当じゃん。でさ、瑞希ちゃん情報あったらいいなーみたいな」
 「ど、どんな?」聞きたいことはなんとなく想像がつくけど、取り合えず引き延ばす。
 「いや、趣味とか、好きな食べ物とか……。つうか、恋人いるかとか、女子に興味あるかとか……」
 そこまで聞く? 答えに困るんだけど……。そして、彼女は想いを語りだした。
 「私が小5の時、瑞希ちゃん高校のエースアタッカーでさ。試合をテレビで観て憧れたんだ。教育実習で来たからバレー部にくるって思ってたのに美術部に行っちゃうからさ、なんでだろうって部活の皆も不思議がってた。その辺のこととかも聞いてない?」
 「特にないけど。それより美術館行った時、ずっと一緒にいたよね? 何も聞かなかったの?」
 「うん。そうなんだけど……、何しゃべったか覚えてなくて。私、浮かれちゃったみたいでさ」
 あぁ、その感じは分かる。香耶ちゃんと花火大会に行った日を思い出した。その時の感覚がそうだった。
 「なんていうかさ、ちょっと身体が触れたときにふわっとして、いい匂いまでして。それでキュンてきて。このままずっと一緒に居たいって思ったんだよね。それから瑞希ちゃんのことばっかり考えるようになってさ」
 照れくさそうに、でも嬉しそうに、惚れた経緯が語られた。こんなの聞かされて、わたしは、どうしたらいいのか……。
 「あ。女が女を好きになるって引く?」
 「い、いいんじゃない」
 「気ぃつかってないよね?」
 首を振って強く否定した。
 「良かった。他の皆には言えなくて」
 なんで他の人に言えないことをよりによってわたしに言う……。
 これ以上は無理だ。なんか後ろめたくて、しんどい。先生はわたしと付き合ってますって言えない。言ってあげたほうが親切なのかもだけど、それを言ったらどんなことが起こるのかまるで想像できないし。
 出されたドリンクを飲み干して帰ろうと思ったけど、ノックとともに女の人が入ってきた。きっとお母さんに違いない。大きなお盆に食事をのせてる。
 「お腹すいたでしょ。食べてって」
 「あ、お邪魔しています。でも、わたし、そろそろ……」
 「若いのに遠慮しないの」テーブルにお盆ごと食事が置かれた。なんか言語道断な圧を感じる。
 「帰りは車で送ってくから。ゆっくりしなさい」
 「あ、いえ、そこまでは。ホントに」
 「細かいことはいいからいいから。京佳の友だちなんだから」
 いや、友だちっていうか、水面下は逆な関係っていうか……。
 小母さんとの会話の最中、新田さんによってわたしの前にチャーハンと餃子とお味噌汁とお漬物が並べられた。全体的に大盛り……。
 「春ちゃん食べよ。いただきまーす」
 わたしの言い分は完全にスルーされ、もはや仲良しのように春ちゃんと呼ばれている。 
 

続く

下のボタンのタップ(クリック)で応援受付中です!

OFUSEで応援を送る


このボタンをタップしますと、わたしのプロフィールが表示されます。画像のちょっと下にファンレターを送るというボタンがあります。そこから支援を受け付けております。ブログの維持費にあてることができるので、宜しくお願いします💜

※画像はアプリを使って加工したものです。実在しません。