終わった恋を思い出す時 💞JKレズ恋小説 春の晩夏7💞

L恋小説

💞L恋小説💞 春の晩夏7 終わった恋を思い出す時

 雨粒はそこいらじゅうにぶつかって霧のような水煙をたてている。良いんだか悪いんだか、この街は駅前を過ぎると取り合えず人通りが少ない。土砂降りだから尚更で、マンションまでの帰り道を独り占めで歩いた。

 帰宅したらお姉ちゃんが待ち構えていて持っていたタオルをわたしの頭に被せた。
 「あんたは、傘くらい買いなさいよ」
 「うん……」
 「香耶ちゃんがこれ持ってきたよ」
 見せられたのは買って忘れてきた桃だった。
 「追いかけたんだけど、見つけられなかったから家まできてくれたんだって」
 いつの間に追い越されたんだろう……。
 「どうした?」
 「お姉ちゃんに色々としてもらったお礼。美味しいって言ってたから」
 「そっちじゃなくて香耶ちゃん。凄く深刻な顔してたよ。直ぐに戻らないといけないからって帰っちゃったけど」
 「そうなんだ……」
 わたしの様子を観察するまでもなく、お姉ちゃんは何かを察した。
 「分かった。はい。じゃあこっち」
 手首をつかまれバスルームに連行された。脱衣所で制服を脱がされた。なんて手際がいいんだろう。わたしが下着姿でボーっとしてるうちに制服は専用の洗濯ネットに入れられた。
 「脱ぐ? 脱がされる?」
 返事する前に、ブラのホックが外された。何もする気なくてそのままでいたら肩紐をそっと下ろされブラも下着用のネットに入れられた。
 「パンツは? 脱ぐ? 脱がされる?」
 「脱がされる」
 冗談を言う余裕が辛うじてあったみたいだ。お姉ちゃんはしゃがんでわたしのパンティを下ろすと、お尻をペチンと叩いた。
 「足、持ちあげる気力ある?」
 わたしの足元でぐずぐずしているパンティから足を引き抜いた。
 「先に入ってて」
 まさしくスゴスゴとバスルームに入って椅子に座った。髪の先からはまだボタボタと水滴が落ちてくる。
 扉が開いてお姉ちゃんが入ってきた。洗濯機の音が大きくなって小さくなった。
 お姉ちゃんの手で泡立てられたシャンプーが髪を撫で、頭からシャワーがかけられた。さっきの雨と違って小粒であったかくて優しかった。
 お姉ちゃんは背中も洗ってくれた。
 有名な川柳が唐突に投げかけられた。
 「鳴かぬなら、鳴くまで待とうホトトギス」
 これって泣くと鳴くをかけてる?
 「鳴かぬなら、それはメスのホトトギス」
 なんとなく頭に浮かんだ。
 「メス鳴くよ」
 あっさり跳ねかえされた。ま、どうでもいいけど。
 「泣かないのは偉いことじゃないからね」
 両ひざで挟んでいる手の隙間を見つめながら頷いた。
 「はい、交代」
 渡されたスポンジでお姉ちゃんの背中を洗った。
 「この町、どう?」
 「どうも思わない。しいて言うならバスがこない」
 「逃げたくなったら我慢しなくていいからね」
 今のわたし、よっぽど堕ちてるんだろうな。こんなにも心配させてる。
 「お姉ちゃん……」
 思わず後ろから抱きついた。
 「じゃあ、鳴かぬなら、焼肉に行こうホトトギス」
 「食べ放題?」
 「じゃないやつ」
 「やたっ」
 胸がつぶれるくらい背中に押し付けた。ふいに唇が頬に触れるとお姉ちゃんは反射的に肩をすくめた。
 こういう反応をされるといたずらしたくなる。そのまま手を下ろして後ろからおっぱいを鷲づかみにしてやった。
 「ちょっと!」
 振り向いたお姉ちゃんがわたしの胸に手を伸ばしてきた。その手をかいくぐって指先で乳首を突いてやった。次の瞬間、冷たいシャワーがわたしの顔に浴びせられた。

 駅近くの焼肉屋さんは月曜だというのにわたし達で満席になった。地元の人気店だそうで、家族連れもいれば女性のお一人様もいる。二人してたらふく食べた。
 お店を出たら美和先輩のお母さんが男の人と並んでいた。直ぐに分かった。きっと先輩のお父さんだ。目と眉毛の感じが良く似ている。
 小母さんから驚きが混じった笑顔で名前を呼ばれた。相変らず温和な表情をしている。挨拶をして、お姉ちゃんを紹介した。小父さんもギャルなわたしに嫌な顔をしないで目を細めてほほ笑んでくれた。先輩と同じ笑顔だ。
 「美和と仲良くしてくださったそうですね。お蔭さまで楽しくて充実していたようです。ありがとう」
 なんて優しくて思いやりがあるんだろう。間接的に美和先輩を感じて懐かしさが湧いてきた。
 ドアが開いて準備ができたという声が掛かった。さっきまでわたし達がいた席に座るのかな。そんな些細なつながりに縁を感じてしまう。 

 家に帰って部屋に戻った。お揃いのネックレスと色違いのシュシュを引っ張りだして身に付けてみる。スマホに唯一入っている美和先輩が撮った夜の雲の写真を見る。シンガポールの夜空にもこんな雲が浮かんでいるのかな?
 今度はLINEを開いて先輩のアイコンをタップする。いつの間にか背景が、別れの時に渡した青いバラになっていた。仕舞っていた想いがこみ上げてくる。トークを遡って初めてのメッセージから読んでみる。思い出に浸る作業がとまらない。
 あの頃の楽しかったこと全部、いや、半分でもいい、取り戻せるならなんでもする。泣かないって決めた涙が画面の上に落ちてくる。
 「連絡はしない」ってわたしから言ったのに指が『会いたい』って入力して送信マークの上で震えている。あのとき美和先輩は珍しく反論した。「決定にしなくていいんじゃない。それでも、どうしても必要な時があったら連絡くらい……」そこで言葉が止められたのは我慢したからじゃないだろうか。
 ×を連打して、文字にした想いを削除した。
 隣の部屋のお姉ちゃんに聞こえないようにタオルケットを頭から被って枕に顔を押し付けた。これ以外、声を出さずに号泣する方法をわたしは知らない。
 「ああああぁっーーーーーーーーーーー!」
 溜め込んでいた我慢を涙と一緒に枕にぶつけた。

続く

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