💞L恋小説💞 春の夏⑫ 夢から現実へ

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春の夏⑫ 夢から現実へ

 二人そろって全裸で目覚めた朝。気恥ずかしさ全開なわたしです。
 布団の中でこっそりパジャマを着ている美和先輩のピンクな乳首を横目でしっかりと盗み見ちゃった。やっぱり綺麗だな。本人を目の前にして昨夜の出来事が蘇ってきたりする。
 二人で目を合わせて、二人とも照れた顔して、おはようのキスをした。

 朝食はおばさんが作ってくれたフレンチトーストとサラダを食べた。桃のスムージーはベランダに出て並んで座って飲んだ。遠くにドンキの看板と真理江ちゃんの住んでいるマンションが見えた。少しだけ現実に戻った気がした。香耶ちゃんはどうしているかな……
 「何考えてるの?」
 「あ、いえ、なんか夢みたいだなって」
 「ホントかなぁ」
 「本当です。ここ、気持ちいいですね」できるだけ自然に伸びをした。
 すると唐突にゲームが提案された。
 質問者は断定で質問をし、回答者は全てに対してYesと答える。ウソをつく時はまばたき二回してからYes。
 例えば、あなたはキティちゃんですね? と言われたら、まばたき二回して「はい」。女子高生ですね? と言われたらまばたきせずに「はい」と答える。
 ウソ発見器の逆パターンに、まばたきがちょい足しされたようなわたしの知らないゲーム。演技のレッスン生の人たちとたまにやるそうだ。
 「じゃあ私から。春ちゃんは今、私じゃない人の事考えていましたね?」
 「え、え、あのちょっと待って下さい。まだちょっとこのゲーム把握できてないです」
 まだそこ突いてくるんだ。そして、図星だったから、かなりうろたえたけど、実際に馴染みのないゲームだから本気さも混じってなんとかごまかした。
 「じゃあ、春ちゃん質問どうぞ」
 「えと……」
 「なんでも良いよ」
 「じゃあ、四次審査を通過する自信がありますね?」
 先輩は、わたしの顔をじっと見つめて頷いた。 

 わたしたちは差しさわりのない質問を何度かぶつけた。先輩といること自体は楽しいのだけれど、どこか遠慮が混ざってしまって、このゲームは正直退屈だった。
 「うーん、なんか盛り上がらないか……」
 「じゃあゲームじゃなくて、質問していいですか?」
 美和先輩がアイドルになりたいと思ったきっかけを聞くと話してくれた。

 小学生の頃に,和菓子会社の副社長さんに気に入られてCMに出演したこと。それから小さいモデル事務所に入ったこと。地元のお店のチラシモデルをしたり、地元のケーブルテレビにたまに出演したりしていること。SNSをしていた時があったけど、誹謗中傷もきたので父親に言われてSNSは止めたこと。その時にファンの人と、もっと有名になって活躍するって約束をしてアカウントを閉じたこと。

 「人に元気を与えているつもりなんてなかったのに、『元気もらえたよ』って言ってくれる事が嬉しくて。それで、もっと、もっとって思ってる」
 先輩はその時に応援してくれていた人のアカウント名を全部メモしてあると言って手帳を取り出した。いつか、私が有名になった時に『あの頃、応援していた〇〇だよ』って言ってもらうのが夢なんだ。って、ずっと遠くの一点を見つめたまま、力強く語る先輩の横顔がとても素敵だった。
 
 わたしたちはバスにのって駅に向かった。
 先輩はこれから東京に行って演技のレッスンを受けるそうだ。電車が来るまで時間があるから二人で駅の近くをブラブラした。水墨画展が明日の日曜日から始まるというポスターを見つけた。一緒に行こうねってデートの約束をした。

 すると、高級そうな車が停まって、カチッとした感じの中年の女の人が降りてきた。
 「あ、副社長!」
 先輩が背筋を伸ばしてお辞儀をした。CMに出演している和菓子会社の副社長さんだそうだ。
 「こんにちは」
 わたしも丁寧にあいさつをした。
 「こちらは?」
 「あ、学校の後輩です」
 
 角が上がっている眼鏡の中から細い目がわたしをチラッと見る。この人は間違いなくわたしを嫌っている。
 すると美和先輩に向かって、商品のイメージをあなたは背負っているんじゃないの? とか、素朴で清楚なイメージなの分かっていないの? とかとか色々な事を言ってきた。
 最初は恐縮して「はい。はい……」と頭を下げていた先輩だったけど、わたしがバカにされた瞬間に手が握られ、微かに震え出した。そして一歩前にでて「でも」って言った。

 その先を言わせてはいけない。すかさず先輩に言った。
 「あの、もういいっすか? なんかぁ、オーディションでやるギャルの演技の勉強したいっつーから付き合ったんだけどぉ、なにこれ? ちょーメンドクサイんですけどぉ~~」
 いくらなんでもこんなしゃべり方しないけど、わざと大袈裟にしてみた。
 「あ、あら、そうだったの? 最初から言ってくれたらよかったのに」
 よく言うよ。疑問形で投げかけていたけど、こちらが何か答える間なんて全く与えずに言いたいこと言いまくってたの、そっちだから。
 「あたし、ダルイから帰るわ」
 そして、先輩に向かって二度まばたきして「もう会わねーし」って言ってやった。ギャルっていうよりヤサグレ女だ……。

 本日も晴天なり。容赦ない太陽光線をあびながら家に向かうやりきれないわたし。夢から現実の世界にこんな感じに戻されるとは思ってもいなかった。
 
 見た目のリスクは承知の上だった。こういう容姿にすることで余計な人は近寄ってこないし、なめられる割合はかなり減る。でも、こんな格好をすることで不利益を被ることは必ず出てくる。
 それが今起きたんだね。デメリットを覚悟した上でわたしはこの生き方を選んだはずなのに、美和先輩が見せてくれた夢のような出来事に現実を忘れてはしゃいでいた。
 なんか分かんないけど悔し涙が出てきた。

 まばたき二回、気がついてくれただろうか? そんなわたしの思いにLINEが応えてくれた。『さっきはごめんなさい。嫌な思いをさせちゃいました。まばたき二回だね。嬉しかったよ』 
 分かってくれたんだ! 退屈なゲームなんて思ってごめんなさい。
 
 でも……、デートは止めたほうがいい気がする。あの副社長さんは好きになれないけど、言っていること間違っていないと思う。

 なんだろう、これ。こんなに聞き分けの良い15歳でいいのだろうか?
 『水墨画展は止めておきましょう』ちょっと悲しい決断を文字にして送った。
 既読はついたけど返事は来なかった。

 このまま終わるのかもしれない。そんな明日がくる気もしている。先輩からもらった色違いの黒いシュシュ。帰宅してランジェリーボックスの奥に大事にしまった。

続く

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