💞 L恋小説 💞
夏休み初日の夜だった。同じクラスの香耶ちゃんに誘われてドンキにお買い物。私がブラブラしてると「春ちゃん」て手招きする。
そこにはハンガーにかかったブルーのとピンクの、面積少なすぎな下着があって、それを顔の高さに挙げて「どっちがいいかな」って真顔で聞いてくる香耶ちゃんがいた。
その二択の意味が分からなくて「それどうするの?」って聞いたら「私の、なんだ……」ってちょっと気まずそう。
「あ、そっか。誰かにプレゼントするのかと思っちゃった」ドギマギを隠しながら答えた。だって香耶ちゃんは地味系な子だからそんな下着を付けるなんて意外でしかないんだよね。
「えと……」二択に迷っているふりをして戸惑いをごまかした。香耶ちゃんはわたしに向かってほほ笑んだ。改めて香耶ちゃんの身体を見る。同級生にしてはわりとエチな身体つき。うちの家系は全員やせ型だから、いとうらやまし。
それにしても香耶ちゃん顔と身体のギャップがエチすぎ。
結局、香耶ちゃんはわたしが指さしたピンクのブラとTバックをカゴにいれてレジに並んだ。髪の茶色いお姉さん店員がバーコードを読む。派手なネイルの指先が無造作に下着の股間に触れた。そこ香耶ちゃんのアソコが当たるとこだよね。そう思ったらドキドキしてきた。何考えてるんだわたし……
香耶ちゃんのバッグにあんなエチな下着が入ってるなんて、一体誰が想像できるだろう。花火大会の帰りらしい浴衣女子なんかとすれ違う。
「花火見たかったな」別にどうでも良かったんだけど言ってみた。
「待ってて」香耶ちゃんはコンビニに走った。
まさかと思うけど、もしかして花火買うの?
彼女は花火でなくチョコモナカジャンボを持って出てきて半分に割ってくれた。甘いバニラと香ばしいモナカの匂いがする。
香耶ちゃんが舌で自分の唇についたバニラを舐める。普段と何も変わらないはずなんだけど、そんな彼女をいつもと違う目で見ているわたしがいる。
そして、通り沿いの公園に入った。香耶ちゃんはバッグから線香花火とライターを取り出した。昨日、親戚たちと遊んだ残りだそうだ。
火の小さな粒がパチパチと音をたててわたしたちの顔をほんのりと照らす。
火種が落ちて暗くなった瞬間、なにかの影が近づいてわたしの頬にふれた。
小さくてやわらかい感触。それは香耶ちゃんの唇だった。わたしは固まった。
リアクションに困る。困る。困るよ。これ何?
「春ちゃん今日はありがとね」そう言って彼女は立ち上がった。
電灯が逆光になって彼女の顔は鼻と目の位置くらいしか分からない。
すぐに目をそらし、花火の燃えカスで地面をいじっているわたしの頭に追加事項が降ってきた。「仲良くなりたくて」
顔を上げると早足で去る後ろ姿があった。
それから二日、連絡はなかった。まあ、今までだって連絡を取り合ってなんてなくて、買い物の日に初めて連絡きたんだった。
気になるならわたしから連絡すればいいんだけど、それは関係を一歩先に進める気がする。あれ、女の子同士でなに考えてんだ。でも、香耶ちゃんから連絡きたら? どっか行こうって誘われたら? 断らないかも。
そしてわたしは夜のドンキに一人でいる。香耶ちゃんが買わなかった方のブルーの上下をカゴに入れたまま迷ってる。
花柄のデザインは可愛いんだけど、付けた自分を想像するとアソコがぢゅんてするんだけど。一人でレジに持ってく勇気ある? 香耶ちゃんも同じだったのかな?
「なにしてんの?」って聞き覚えのある声がした。秋姉ちゃんが立ってた。
「あんたもこーゆーのに興味もったか」
「違うし」
否定の言葉は通用しない。わたしが生まれてこのかた姉妹なのだ。
お姉ちゃんは自分のカゴにブルーの上下を入れてレジに向かった。
ベッドの上に面積の小さなブルーの上下を置いてみた。
秋姉ちゃんが間に入ったから、なんか醒めた。買って帰ってきたらシャワーの後に身に付けて鏡に写してみようなんて思っていたんだけど。
姉ちゃんめ、余計なことを。これが萎えるってことなのか。
そのブルーな上下をランジェリーボックスの一番奥にしまい込んだ。
翌日だった、起きてスマホみたら香耶ちゃんからLINEがきてた。
「ちょっと遠いけど、嫌じゃなかったら、明日の夜、花火大会いかない?」
嫌なわけないじゃん。返信より先にエッチなブルーのやつを引っ張り出した。
浴衣着ていきたいな。でも、秋姉ちゃんに手伝ってもらうのにこれ付けてるのはちょっとな。
困った時のYouTube。動画を見ながら浴衣と格闘すること2時間。待ち合わせに遅れちゃう。思わず髪の毛をぐしゃぐしゃしながら「もうっ!」って大きな声を出しちゃった。
ノックがして秋姉ちゃんが入ってきた。浴衣の前がはだけ、エッチでブルーな下着姿の心まで乱れているわたしの腕を秋姉ちゃんが掴んで見つめてきた。
「花火デート?」
お姉ちゃんはブラの上から乳首のあたりを指で突いてきた。
「ちょっと!」
「あと時間どれくらい?」
「あー、10分」
「少し遅れるって連絡いれな」
「うん」
メッセージを入力するわたしの浴衣を手際よく着付け、ついでに髪の毛も綺麗にアップにしてくれた。
「男の子じゃないから」
「え?」
「待ち合わせ」
駅の改札前、浴衣姿の香耶ちゃんが小さく手を振る。この瞬間、心臓の鼓動を自覚した。
わたしの思春期は恋を確信した。けれど、固定観念ってやつだと思うんだけど、そいつがうまいことブレーキをかける。
小さくドキドキしながら改札の中に入って階段を上って電車に乗った。何を話したんだかまるで記憶にないんだけど。
打ち上げ場所より離れた河原の端っこに並んで立った。
何年前からか自然発生的に若い人たちとそうでない人たちの居場所がわかれるようになったそうだ。こっちは比較的、お祭り騒ぎだったりする。
打ち上げ前から皆がワクワクしてる。そんな空気を感じた香耶ちゃんと同時に顔を見合わせ、どちらからともなくほほ笑んで頷いた。
花火が打ちあがるたび、音が胸に響いて気持ちまで煽ってくる。
でも、花火だけのせいじゃない。
だって、もっと近くから見た事があったけど、こんな感じにならなかったから。
平常心ではないわたしの体感時間は何気に長い。
始まってからどれくらい経ったんだろう。
何度となくお互いの手の甲がぶつかった。その手をわたしから握った。香耶ちゃんは何もないように花火を見て声を張り上げる。
いよいよクライマックス。目の前にいる人たちがその場でジャンプを始める。段々と周りの人たちもつられてジャンプする。何連発なのか分かんないけど容赦ないくらいの火花が散りまくる。
周りの人たちがハイタッチしてる。わたしも香耶ちゃんに向かって両手を挙げた。
ハイタッチをした瞬間、恋人つなぎをして、手を上げたまま彼女の唇にキスをした。ほんの一瞬だけで離しちゃったけど。
周囲のノリに便乗したわけじゃない。そうだ、これはノリじゃない。そんな事どうでもいいや。こんなの取るに足らないって言われると思うけど。わたしは香耶ちゃんとキスをした。
「うれしい」周囲の喧騒が大きすぎて聞き取れなかったけど、香耶ちゃんの唇がそう動いた。
わたしは照れくさくなって花火のない空を見上げた。大きな煙が上に向かいながらその姿を消していく。
わたしたちの夏がはじまった。
続く
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