💞L恋小説 春の晩夏22💞 誤解された?
ホームルームが終わった。新田さんはすでに廊下で待ち構えていた。彼女がわたしにして欲しい『応援』とは、メイクと髪のセットだった。断りきれずに拝み倒された。なんでわたしのカノジョに告白する女子を綺麗にするお手伝いをしなくちゃいけないんだ。
とはいえ、そんな事を言えるはずもなく、自転車の二人乗りで新田さんの家に行き、カラオケボックスだったコンテナの部屋に入った。
新田さんは直ぐに制服を脱いだ。ブラのサイズがあってないからカップが浮いている。故にピンクの乳首がちらっと見える。突いてみたくなる衝動をわたしは抑えながら、たまにのぞき見しながら新田さんの髪の毛のセットとメイクをした。
かなりな美人が完成した。スタイルもいいからうっかり見惚れてしまった。この前買った服を身に付けた彼女は読モになれるんじゃないかレベルだ。
新田さんは壁の鏡に全身を写してじっと観察するように鏡の中の自分を見つめた。
「私じゃないみたいな私がいる」
意味は分かんないけど感覚は分かる。
わたしも鏡に写った新田さんを見つめてみる。もしも、わたしに好きな相手がいない時だったら、この新田さんに告白されたら付き合っちゃうかもしれない。
瑞希ちゃん、ちゃんと断るよね?
部屋を出たら母屋から小母さんが出てきた。ハンバーグがどっさり載ったお皿がお盆にのっている。呼びとめる小母さんを振り切って学校に向かった。
わたしの役目は終わったから帰ろうとしたら今度は新田さんに引き留められた。
「かなり緊張してきた。一人だと無理」
「いやいや」
いくらなんでもわたしのカノジョに告白する現場に立ち会うなんてあり得ない。
「春ちゃん、お願い」
「わたしが居るの不自然過ぎだから」
「うん……じゃあ、待っててくれる?」
マジかぁ。
そして、道の真ん中で二人なのに円陣を組まされた。いつも試合前にするらしい。彼女は自分を奮い立たせる。
「京佳ぁ~ファイっ!」
「お~」
よく分かんないから軽く握った拳を見せて応えた。
新田さんは校門の前で瑞希ちゃんを待ち伏せ、わたしは無人の野菜販売機と自販機がある『ハッピーコーナー』って看板に書かれた広いスペースのベンチで待つことになった。学校の近くにこんな場所があったなんて新発見。よく見たら精米機まで置いてある。
売っているドリンクを眺めていたら『地域限定白桃ネクター』っていうレトロな見た目の缶が目に留まったから買ってみた。開けた瞬間にモモの香りが広がった。かなり濃厚で甘いから喉にはりついてむせる。飲み物でなくスイーツのつもりで口にいれたらいけるかも。凍らせてシャーベットにしたら美味しいかもしれない。もう一缶買ってバッグにいれた。
やはり9月も最後の日となると陽が沈むのが早い。空の色が実は秋なんだってこっそり主張している。
軽トラックが停まって農家さんみたいな人が降りて来た。そして「よっこいしょ」とか言って大きな袋を持ち上げて精米機に向かっていった。
『扉が開きましたら玄米を入れてください』って精米機がしゃべった。
ふと思った。わたし、こんな所でなにしてんだ?
そうしたら新田さんが満面すぎるほどの笑顔で手を振りながら駆けてきた。
どう解釈したらいいんだろうか? これはきっとフェイクに違いない。でも、どうなんだろう? まさか瑞希ちゃんOKした? とか、瑞希ちゃんに限ってとか、こんなに新田さんのことを綺麗にしなけりゃ良かったとか、秒の間に思考が浮かんでは消えてまた蘇った。
新田さんが目の前にきて、爪先をそろえて立ち止まり胸を張った。
「春ちゃん、お待たせ」
「え、あ、うん」
彼女の口角がめいっぱい持ち上がった。次の瞬間、唇が震えて涙が粒になってボロボロ零れだした。オリーブグリーンのカーゴパンツの膝辺りが濡れて濃い緑になった。
新田さんは顔を上げてわたしの目を見た。
「……ダメだった」
「新田さん……」続けるべき言葉が見つからないけど、何か声をかけたくて名前だけを呟いた。
彼女は顔を伏せて泣いた。その背中に手をあててポンポンって撫でたらわたしの胸におでこを押し付けてきた。
こんなにもシリアスな状況なのに、精米機からはカシャカシャっていう脱穀の細かい音が鳴りやまない。辺りは暗くなって『ハッピーコーナー』って看板の文字が輝いた。なんて皮肉な演出なんだ。
「春ちゃん、お願いしていい?」
「うん、いいよ」内容も聞かずに受け入れる返事をしてしまった。
「あのね、京佳って、京佳大丈夫だよ。って言って欲しい」
―― なんなんだそれは。
てっきり、少しでいいからこのままでいさせて、って感じのお願いだと思っていたのに。
「友だちなのに苗字にさん付けって寂しいよ。私、本当は春ちゃんの迷惑になってる?」
「違うよ。えと、シンプルに下の名前呼ぶの照れくさい」
彼女は何度か下唇を噛んでから続けた。
「今だけ、そしたら私、立ち直るから」
泣いて懇願されたらやるしかない。
「きょ、京佳、ちゃん。大丈夫だよ」
「……うん」
新田さんは立ち直ることなく、逆に号泣した。
「京佳ちゃん。大丈夫だから」
こうなることは分かっていたはずなのに、なんで全力で止めなかったんだろう? 泣いている姿を見たら後悔が胸いっぱいに広がって彼女を抱きしめた。制服のリボンはもうビショビショだけど、どうでもいい。せめて新田さんの痛みが和らぐようにって髪を撫でた。
やっと脱穀の音が消えたと思ったら、今度は米ぬかがどうしたとか言ってる。ホントこんな時になんなんだ。
農家の人が「お嬢さん大丈夫?」って大きな声で聞いてきた。顔を上げて無言で頷いた。
そしたら、瑞希ちゃんと目が合った。いつの間にかそこにいたらしい。危うく新田さんを突き飛ばすところだったが、そうならずにわたしは固まった。
瑞希ちゃんがわたしの事をじっと見据えている。どうしたらいいんだ……。
苦し紛れに新田さんの背中にあてた手の人差し指と中指を立てて見せた。瑞希ちゃんはサインを返してくれずにそのまま立ち去った。
この展開、いくらなんでもエグすぎなんだけど。
続く
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※ 画像と記事は関係ありません。画像はAIアプリを使って生成したものです。
