💞L恋小説💞 春の夏⑲ 恋の再確認

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春の夏⑲ 恋の再確認

 なかなかやってこない夏の夜はわたしの味方だった。暗くなる前に家につけた。
 歩きながらずっと考えてた。香耶ちゃんにLINEしなくちゃって。色々と打ち明ける勇気はまだでないけど、お礼だけは伝えなくちゃ。
 『さっきは本当にありがとう。いま着いたよ。そっちは大丈夫? 急いでたのに、わたしの為に戻ってきてくれたんだよね。香耶ちゃんに会わなかったらヤバかった。会えて良かった。本当にありがとう』
 会えて良かったって言葉には、多分、違う意味が含まれている。無意識に打ったけどそれを意識しても言葉を変えないわたしがいる。

 送信してすぐ、お姉ちゃんが帰宅した。洗面所に行って手を洗って戻って来ると「誰か泊まった?」って疑問形ながらもどこか断定的に聞いてきた。
 「なんで?」
 「バスタオルが二枚。あんたは広げて洗濯機の上に置くけど、たたんだやつが一枚あったから」
 そんな痕跡が残ってたなんて……。帰りの電車で推理小説でも読んできたんだろうか。ちょっと探偵気取りな感じもする。
 「男の子じゃないよ」
 「それは分かる。この前の桃の子?」
 お見通しだ。わたしは頷いた。
 「初めてだね。あんたの友だちが泊まるの」
 「うん」
 「泣かすなよ」
 「はぁ?」
 と言ったものの、泣かしたことあったりする。わたしも泣いたけど。ていうか、恋の相手って前提で言ってない?
 「私も青春したいな~」
 冗談ぽく言いながらお姉ちゃんはバスルームに向かった。

 ちなみに、秋姉ちゃんはゴーストライターをしている。有名人とか、偉い人とか、芸能人なんかの自伝みたいなやつを本人に代わって書いていて、その出版社の女の人と付き合っている。引っ越してくる前はちょくちょく外泊していたけど、わたしの為にここに来てからは一回だってお泊りしたことがない。

 お風呂から出てきたお姉ちゃんにお泊りをお勧めしたら検討するって言って冷蔵庫を開けた。その時ハミングしてたからきっとカノジョさんとの甘い時間を想像したのかもしれない。そんなお姉ちゃんの様子からは恋の香りがした。

 次の日の夜だった。秋姉ちゃんが歯切れ悪く言ってきた。
 「あのさ、ホントにお泊りしても大丈夫なわけ?」
 「いいよ」
 「あんた一人にするのは心配だからさ、桃の子これる日にちょっとお泊りしようかなって」
 好都合だ。とは言え、この前みたいに大喜びできないわたしもいる。
 昨夜、香耶ちゃんから返信がきた。
 『無事について良かった。こっちは大丈夫だよ。私も会えてよかった』
  わたしが送ったメッセージと同じく、『会えてよかった』には、あそこで会って良かったではなく、わたしたちが出会えたことを指している気がしてならない。
 「ねえ、ちょっと聞いてる?」
 「うん」
 「あの子は良い子だよ。ひたむきな目で、あんたの事をしっかり見てる」
 だよね。わたしには美和先輩が居るんだよね。今、お姉ちゃんに言われたことでちゃんと再確認できたよ。

 屋上に上がってみた。ここは東京と違って空が広い。見上げなくてもその気配が視界に入ってくる。
 先ず、香耶ちゃんにLINEした。
 『話したいことがあるから今度、時間作れそうな時あったら教えて』
 やっぱり会ってちゃんと話すことにした。
 香耶ちゃんからは『了解!』ってなんかの可愛げなキャラのスタンプが送られてきた。
 次は美和先輩にLINEをする。
 『お姉ちゃんがカノジョさんのところにお泊りしたいみたいで、わたしが心配だから先輩が家にきてくれたらなーって言ってます。これる日に合わせるそーですが、泊まってもらえる日ってありますか?』
 送信して直ぐ電話がかかってきた。
 「声が聴きたかったから電話しちゃった」
 やっぱり、わたしには先輩だけだ。そう心に誓った。
 月の光が雲の輪郭を綺麗に縁取って厳かな水墨画のようだ。
 美和先輩は月曜日に来てくれることになった。次の日はゆっくりできるっていうから楽しみだ。

 今日は日曜日。これからピザ屋のバイトに行く。有紗さんと顔を合わせるのは気まずいけど、今のわたしならなんでもできる気がしている。なんて言うかも考えた。
 「ごめんなさい。写真は本当に嫌なのでごめんなさい」これだけでいい。

 ところが、お店に行ったらメチャ込みだった。有紗さんもわたしと話したそうだったけど、タイミングが合いそうになるとお客さんに呼ばれてしまう。
 そうしたら紙切れがわたしの目の前に置かれた。そして、有紗さんは急いでホールに出て行った。
 『この前はごめん』って紙ナプキンに書いてあった。
 返事をする暇はなかったけど、丁度いいタイミングで有紗さんがきた。伸ばされた生地にピザソースで『OK』って書いて見せると有紗さんは頷いてホールに出て行った。
 これでいいよね。そう思ったら、また何か書いてある紙ナプキンがわたしの前に置かれた。
 『写真は撮らないからドライブいこ』
 今度は『NO』って書いたピザ生地を見せた。
 「え、なんで?」
 まどろっこしいトークは終了した。店長に聞こえないように声を小さくして言った。
 「付き合ってる人いるんで」
 「友達として誘ってるんだけど」
 「ごめんなさい。きっとわたしはその人の事が気になって楽しめないので」
 有紗さんは上を見てちょっと唸った。店長が焼きあがったピザを出した。それを手にしてホールに向かいながら言った。
 「なんか失恋した気分」

 わたしらしからぬ大人対応。一夜にして胸がBカップからFカップになったくらいの成長ぶりだ。

続く

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