吉原、登楼後の散策
※ この記事はエッチな描写がないでありんす。
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打ち水、朝顔、かき氷。
吉原の季節がやってきた。
夏になると、何故か昼日中の吉原の街に繰り出したくなる。
繁華街ではなく、住宅街と密接な位置関係にある色街。大通りには高級マンションまでそびえている。
路地裏の古ぼけたコンクリートのアパートには味がある。背の曲がった老婆が辛そうに階段を上っていく。その後ろ姿にさえもドラマを感じる。
吉原公園からは蝉時雨と共に、健全なる子供たちが野球をして遊ぶ声が聞こえる。その向かいには不健全な営みが行われる湯屋がある。その入り口に立ち、通りゆく男衆に声を掛ける店員さんの姿が見える。
玉石混淆としたわっちが好きな街。
真昼に姫との逢瀬を終えたわっちは、ぶらりと吉原の街を散策した。
湯屋の前を通るたびに声がかかる。
気さくな店員さんと立ち話などするのもたまにはいい。
あてもないぶらり散歩の道すがら、通りかかったのは吉原弁財天。

小さな敷地に木々が生い茂り涼し気な場所。
管理人さんであろうか、麦わら帽子を被った初老の男性が水撒きをしている。
一度通り過ぎるが足を止めて引き返す。
中は木陰と打ち水の効果で少しだけ涼を感じる。
管理人さんと挨拶を交わし、奥まで進んでみる。ちょっとした冒険気分。
奥には池があり、赤や金、色彩鮮やかな大きな鯉たちが泳いでいた。

わっちは姫にもらった缶のお茶を開けて口にした。
真夏の昼日中、訪れる人もほとんどなく、涼をとるには最適な場所だった。
吉原観音に線香を上げて弁財天を後にした。
まだ散策したい気分が残っていたので、以前お相手してくれた姫から聞いた『 見返り柳 』を一目見ようと、吉原大門を目指す。
紹介所を営む中年の女性が声をかけてくる。
話ついでに見返り柳の場所を教えてもらう。
それは、かつての吉原遊郭の入り口である吉原大門の前に位置していた。
今は吉原大門交差点の土手通り沿いに静かにたたずんでいる。

昔々、遊郭で遊んだ帰りにまだ未練ある男がこの柳の辺りでふり返ったと言われていて川柳でもよく読まれるそうな。
なんとも趣がありんすなあ。
名残惜しいけれど、日差しがきつい。わっちも帰ることにした。
蝉時雨、向日葵、蚊取り線香。
団扇、入道雲、冷やし中華。
そして、湯屋で働く泡姫の姉さんたち。
やっぱり夏は吉原でありんす。
BY 夏月秋狼

